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コラム

実録!事故は誰も幸せになれない…という話

キャンピングカーに限らず、ハンドルを握る人間は誰もが事故のリスクを負っている。誰も事故になど遭いたくもないし、そのくせ、どんなに気を付けていても遭うときは遭ってしまうものなのだ。

旅先での所用を済ませて、私一人、高速道路を帰途についていたときのことだ。
走行車線を走行中、ドカンという音とステアリングへの衝撃。バーストを疑ったが、どうもそうではないらしい。とはいえ異常事態には違いない。とにかく確認せねば、とハザードを点灯して路肩に寄せた。高速道路本線上の、まぁまぁ広い路側帯。乗用車なら問題はないだろうが、いかんせん大柄なアメリカン・クラスCである。左のミラーが防音壁にこすりそうなほど、ギリギリまで寄せて停めた。右ミラーで確認すると、路側帯のラインが見える。どうにか収まった。後続車も次々と、右わきを通り過ぎていく。
時刻は朝の4時。しらじらと夜が明けつつあったが、高速道路上のことである。三角表示板を出さねば、と腰を浮かせた瞬間、それは起きた。

高速道路で当て逃げ?

バキバキッ!ドカン!

尋常ではない音とともに、注視していた右のミラーがアームごと飛んで行った。同時に、横からの強い衝撃。10tトラックが接触したようだ。
(おいおい…)と思ったのもつかの間、信じられないことが起こった。当てたトラックが、減速するそぶりも見せずに去っていくのだ。
これはもう「おいおい」どころではない。
まずいことに、先月ドライブレコーダーが故障して、取り換えなきゃなと思っていた矢先のできごとだ。このままでは逃げられてしまう! 即座に追跡を開始した。

とはいえ、そもそも止まった原因が異音である。バーストではなさそうだとあたりをつけてはいたが、慎重にスピードを上げていくことに。だが、幸い異常はないし異音もしていない。
さて問題のトラックはというと、最近の大型車には速度抑制装置が付いていて90km/hまでしか出ないから、どうにか追いつくことができた。
後ろにぴたりとつける。パッシングをしても、ホーンを鳴らしても、減速するそぶりも見せない。そうこうするうちPAを通過したので「さては止まる気がないな?」と判断。110番通報する。

「110番です、どうされましたか」
「高速道路上で当て逃げされて、当てた車を追跡しています」
「無理に相手を停めたりしないように。相手のナンバーは見えますか」
「見えます。名古屋ナンバーの〇×〇×…」
「車の色は判りますか」
「白色です。会社名は×▼◆です」
「わかりました。では、あなたは最寄りのPAに入って警察官の到着を待ってください」

昨今、あおり運転から傷害事件に発展する事件が多発しているせいか、警察の一番の注意は「相手を停めるな」だった。こちらもそこまで通報した以上、無理をする気もない。ナンバーも会社名も確認した。あとは警察に任せるしかない。

犯人確保! だが…?

次のSAに入って、状況を確認してみることに。
なんとまぁ、リアからボンネットまで、まんべんなく、丁寧にこすって行ってくれたようだ。がっつりと傷がつき、ミラーは根元のアームからバッキリ。折れたミラーが当たったのか、フロントフェンダーにも大きな凹みが。その他にも、換気扇の吹き出し口や、窓枠など、あらゆるところが傷だらけ。やれやれ、愛車がかわいそうでならない。それどころか「相手が捕まってくれないとエライことになるなぁ…」というのが素直な気持ちだ。

そうこうするうちにパトカーが到着し、状況を説明。事故現場の特定などしていると、
「相手に連絡がついて、現在〇〇PAで止まってもらっています」との連絡が。
パトカーの先導で〇〇PAに向かうと、いましたいました。間違いない、自分の左ミラーもすっかり無いし、気が付かないわけがないだろうに。なんで逃げたかな。

警察が一通り、双方の車の写真を撮り、書類を作成した。相手と連絡先などを交換したところで、警察官から「あて逃げってことなんだけど、どうします?」との問いが。
要は刑事事件にしますか・どうしますか?ということだ。
当て逃げ事件は、親告罪である。被害者が相手を告発すれば刑事事件になるが、しなければ刑事事件にはならない。つまり、罰金・罰則は課せられない。この場合、被害者は私なので、私が告発するか・しないかにかかっている。
起こったことだけを考えれば、立派に事件である。人の車にぶつけておいて、逃げたのだから。ただ、逃げたことは事実だが、相手はプロドライバーである。免許を失えばご飯が食べられないだろう。

「ご覧の通り、普通の車じゃないから、けっこう修理にお金がかかると思う。けれど、それをちゃんと保証してくれるなら、刑事事件にはしない」。
柄にもなく仏心を出してしまった。相手は会社だし、ちゃんとしてくれるだろうという勝手な思い込みだったのだが、この判断をすぐに後悔することになる。

さて、さしあたっての現実問題は「どうやって帰る?」ということだ。
愛車は走れない訳ではないが、右ミラーがまるごとない。
「これで走ったら捕まります?」
警察官に尋ねても「私の口からはなんとも…」という頼りない返事。とにかく気を付けて走れ、ということらしい。
その場に車を放置するわけにもいかない。外の傷はともかく、前後左右のタイヤ、エンジンまわりを、時間をかけて慎重にチェックした。これで何かあれば、責任逃れはできない。エンジンをかけても異常はない。異音も異臭もしないし、何かが漏れている様子もない。計器類も正常だ。そこで、恐る恐るビルダーに向かう決意をする。ハンドルに伝わる振動や音、におい。車の挙動に細心の注意を払いながら走る。あんなに丁寧にアクセルを踏んだのは、免許取り立てのころ以来である。
幸い、ビルダーの店舗はICからほど近いところ。朝早いこともあって交通量も少ない。いつもなら2時間ほどの距離を倍近くかかって、どうにか到着したときにはぐったり疲れていた。

ここからが、問題の始まり

だいぶん家に近づいたとはいえ、出張帰りで荷物もある。ここから電車で帰るわけにもいかない。レンタカーを手配する旨を相手の会社に通達しようと電話するも「今日は祝日で保険会社の担当がいない」の一点張り。「当て逃げしたのは、あなたの会社の社員だろうが…」と押し問答の繰り返し。どうにかレンタカーを借りることを承服させて、ほうほうのていで帰宅した。
もうその日はぐったりである。事故のことなど考えたくもない。警察には連絡したし、車は修理に出した。明日になれば相手の保険会社から連絡が来るだろう。あとは周囲に任せよう。考えても始まらない。と、思っていたのだが。ところがどっこい、相手からさっぱり連絡が来ないのだ。
連休があけ、平日になるのを待ってこちらから連絡。すると
「あと5日しないと、当該車両が帰社しない。帰社してドライブレコーダーを見るまでは何も言えない」と驚愕の返答が。
おっしゃっていることがわかりません。
他の車とぶつかってミラーが吹き飛んだ車が、一度も会社に戻らずに平常運行してるってことなの? 大丈夫か?この会社。とはいえ、電話で何を言っても話にならず。ばかみたいだが、相手の言う日にちまで待つことに。
悪い予感とは当たるものだ。相手の言う「帰社するはずの日」になっても連絡が来ない。イライラが募り始めた夕方になって、やっと連絡が来たが、来たら来たで「保険会社は○○。担当は××さんだから」。と一方的に言われて終わり。
ならば、と保険会社に連絡してみると「当該車両のドライブレコーダーには、データが残ってなかったということです。なので当社でも見ていません。運転手はあなたが路側帯からはみ出して停まっていたと言っている。だから100%こちらが悪いとは思えない」との返事。そろそろ、何を言われても驚かなくなってきた。
ただただ、頭に浮かんだのは
「刑事事件にしないだなんて、当て逃げ見逃してやるんじゃなかった」ということ。
とは思っても後の祭りである。

そして現在。事故から2か月が過ぎている。警察にも改めて電話をした。後からでも親告はできるので、今からでも刑事事件にしようか、とか。事態を重く見た警察も、相手企業に一報入れてくれたらしい。自分の保険会社にも相談した。
いい加減すったもんだして、これは長期戦になるか。どうしても100対ゼロは無理なのか…と思い始めたころ。あっさり相手の保険会社から電話がかかってきて「100%、こちらの過失です」。やれやれ、いったい何だったんだ。
ということで、本日現在、愛車は戻ってきていない。

これはよく言われることだが「こちらに過失がなくても、事故があれば損することばかり」だ。

今回の教訓。
とにかく、ドライブレコーダーは必ずつけましょう、
任意保険の内容もしっかりチェック! 特に弁護士特約は重要ですよ。

わたなべたつお

キャンピングカージャーナリスト。サラリーマンからフリーライターに転身後、キャンピングカーに出会ってこの道へ。専門誌への執筆のほか、各地キャンピングカーショーでのセミナー講師、テレビ出演も多い。エンジンで輪っかが回るものなら2輪でも4輪でも大好き。飛行機マニアでもある。旅のお供は猫6匹とヨメさんひとり。 朝日新聞デジタルで週刊コラム「キャンピングカーで行こう!」連載中

http://www.asahi.com/and_M/campingcar_list.html

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