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コラム

キャンピングカーは壊れやすいのか

「キャンピングカーって壊れませんか?」「色々付いてるから、維持費高くないですか?」
キャンピングカーを持っていない人から、よく受ける質問だ。
見たことはあっても実際に触れた経験がない、という人は多い。「特殊な車」という先入観もあるだろう。そういう漠然とした不安感が、このような印象を抱かせるのだと思う。
確かに、皆さんが普段の生活の中で乗っている乗用車よりは大きい(ものもある)。車の中にベッドがあったり食卓があったり、キッチンがついている、というのは「すごいこと」だ。
ただ、こうした質問をされる方のお話を伺っていると、そもそも話の前提として
「所有している間(自分の所有物である間)不具合は発生しない」のが基準になっていることに気づく。当たり前かもしれないが、彼らの中での比較対象が「国産の普通の車」なのだ。

「家が動く」って実はすごいこと!

「自動車として」壊れにくいか・壊れやすいか、という話ならば、国産乗用車か、国産商用車か、いわゆる外車(乗用車・商用車)かによって事情は違う。
これはこれで奥の深い話なので別の機会に譲るが、今回は単純に「キャンピングカーは壊れやすいのか」について考えてみよう。

誤解を恐れず言えば、キャンピングカーは「壊れる」。ただし、「壊れやすい」わけでもないし、あくまでも「普通の車と比較すれば」ということだ。
そしてその主な要因は、自動車部分というよりも「家部分」にある。何しろ普通の乗用車や商用車にはついていないものが色々とあるのだから。装備が多いということは、それだけ故障の要因が増えるということでもある。

家部分に使われている様々なパーツのほとんどは、住宅用のものではない。
ドアや窓、キッチン、収納。どれも住宅にもある機能だが、住宅用の建材・部材はまず使われていない。それぞれキャンピングカー専用のパーツである。
もちろん、それにはちゃんと意味がある。
まず第一に「動く家」であること。走ることを前提に「機能」や「強度」、「重量」が考えられている。
キャンピングカーの家部分は、走る間、常に震度3や4でゆすられ続けているようなもの。ギシギシとひずむ力が加わり続ければ、どんな部材だって疲労もする。長い間にはゆがみも生じる。『震度7の地震に◎回以上耐える家』なんていうCMがあるが、ある意味、その比ではない。住宅にはない、力の加わり方なのである。当然、キャンピングカーにはそれに備えたしなやかさであったり、強度が与えられている。
当たり前だが、キャンピングカーは車である。車は軽ければ軽いほど、燃費はいい。足回り(ショック、サスペンション)やブレーキ(停止)にかかる負担も小さい。走行もそれだけ安全だ。そのため、窓枠もドアも水道の蛇口も、なるべく軽量に作られている。

国産のキャンピングカーの場合、こうした居室用の部材(窓枠、ドア、蛇口…などなど)は、ヨーロッパ製のパーツが使われていることが多い。
デザイン的にも機能的にも非常によく考えられているのだが、アメリカ製と比べると、やや華奢、つまり脆弱であるのはいなめない。バタバタと手荒に扱うのではなく、そっと優雅に触れてあげる必要があるのだ。その点、アメリカ製は非常におおざっぱで気遣いは不要。ただし、頑丈な分、重量はかさんでしまう。燃費にも、車両への負担も大きいというわけだ。

便利さ、丈夫さ、安全性

あるショー会場でのこと。
展示車に乗り込んだお子さんが、ベッドの上でおおはしゃぎしているのを、ニコニコしながら見ているビルダーの社長さんがいらっしゃった。親御さんが恐縮して「ダメよ!」と叱るのを制して、こう言ったのだ。
「いいんですよ。キャンピングカーを実際に使うとなれば、子どもははしゃぐもんです。そのぐらいで壊れるようなら、それは僕の設計が悪い。ここでテストしてもらってるようなもんです」
大げさでなく、日本の物づくりの精神は生きているなあ…と感動したものだ。

「生活空間を持ち歩く」ということ自体、ある種「相反した条件をバランスよく両立させる」技術のたまものだ。自動車という観点からすればなるべく軽いほうがいい。
住宅設備という観点からすれば、便利で快適で丈夫なのがいい。
ベース車両の許容限度荷重だってある。強度と重量と機能のバランスを考えて架装してある。それがキャンピングカーなのだ。
そんな「スゴい」車を、ただ一言「壊れやすい」と断じるのは、ちょっと待って…といいたいのだ。
国産乗用車は非常によくできている。定期的な車検(付随する予備整備)さえ受けていれば、あとはガソリンさえ入れればよく走る。それと同じに考えてもらっちゃ困るのだ。
確かに「使いっぱなし」「雑に扱っても故障知らず」とはいかない。それだけ「普通ではない機能」がたくさん盛り込まれているのだから。それもプロの計算によって、絶妙なバランスで成り立っているのだ。ということを、キャンピングカーを持つ人も、まだ持っていない人にも、知っていただけたら…と思う。

キャンピングカーは趣味の道具だ。ヴィンテージのギター、作家ものの釣り竿、一点物の自転車…そうしたものと同じだと思ったらどうだろう。
適切な手入れをすれば、故障は激減する。確かな知識をもとに手を加えれば、素晴らしい、自分だけの一台に育ってゆく。逆に、プロが計算し尽くして作ったものに、確たる知識もなしに手を加えれば、バランスは崩れてしまう…。
オフタイムの過ごし方を劇的に楽しく、自由にしてくれるキャンピングカー。
「壊れやすい」「壊れにくい」という目で見るだけでなく、人生の相棒として、長く手入れして愛用する視点を持ちたいものである。

わたなべたつお

キャンピングカージャーナリスト。サラリーマンからフリーライターに転身後、キャンピングカーに出会ってこの道へ。専門誌への執筆のほか、各地キャンピングカーショーでのセミナー講師、テレビ出演も多い。エンジンで輪っかが回るものなら2輪でも4輪でも大好き。飛行機マニアでもある。旅のお供は猫6匹とヨメさんひとり。 朝日新聞デジタルで週刊コラム「キャンピングカーで行こう!」連載中

http://www.asahi.com/and_M/campingcar_list.html

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