ガソリン車販売禁止?キャンピングカーへの影響は??
「2030年代半ばまでにガソリン自動車の販売を禁止とする」
昨年暮れ、そんなショッキングなニュースが紙面を賑わせた。とはいえ、政府の正式決定でもなんでもなく、カーボンニュートラルへ向けた専門委員会の提言程度の話なのだが、トヨタの社長が反対意見を表明するなど大騒ぎになっている。
さてさて、これがキャンピングカーにどの程度影響するのかについて、今回は考えてみたい。
結論:直ちに影響はない
まず言えるのは、15年近く先の話だということ。しかも対象となる「純ガソリン車」の定義が非常にあいまいだ。あまりにも漠然とした「概念」レベルの話なので、正直言って「…だといいね」ぐらいのイメージ論であると言わざるを得ない。SDGsを見据えた提言なのはわかるが、実現にいたるロードマップも見えてこない。
とはいえ「これからキャンピングカーを買おうと思っているのに」とか「今乗ってる車はいつまで乗れるんですか」といった声も聞こえてくる。どうやら15年前のディーゼル車規制の騒ぎを思い出して不安に思う人が多いようだ。
今のところ俎上に挙げられているのは「ガソリンだけで動く純ガソリン車」だから、ガソリンを要する車でもハイブリッド車やディーゼル車は対象外だ。しかも新車の販売が禁止されるだけなので、今すでに使っている車には何の影響もない。(2030年代になって、この規制事項が変わらなければ、の話だが)
先々禁止になることがあったとしても、15年以上も先まで今の車に乗っていますか?ということである。
当然、自動車業界からの反発も予想されるであろうし、それまでの15年間で電気自動車などの開発がどこまで進むかも未知数だ。
これらを総合すれば、当面影響はないと言っていいだろうと思う。
むしろ別の心配事が……
とはいえ、ガソリン車の新車販売を禁止する動きは世界中で広がっている。イギリスは時期を当初計画の2035年から2030年への前倒しを決定。アメリカ・カリフォルニア州では2035年までに販売禁止とする方針だそうだ。二酸化炭素の排出低減に向けて、化石燃料以外のエネルギーに向かうのは必須といえるだろう。
それが電気自動車なのか燃料電池車(広義には電気自動車だが)になるのかは判らない。ただ、その道のりは決して簡単ではないと思う。電気であれ水素であれ、現在のガソリンスタンドと同程度の供給インフラを構築しないといけないからだ。
そして車に乗る誰もが感じていることと思うが、現在、ガソリンスタンドは減少の一途をたどっている。経済産業省のデータによれば、国内のガソリンスタンドの軒数は1994年度の約6万軒をピークに、現在は約3万軒。この25年で半減してしまっている。もちろん、ハイブリッド車や低燃費車が増えたことによる需要の減少=消費量低下、そこから引き起こされる採算性の悪化などが原因だ。
私自身、旅先で給油をしようとカーナビで検索して、たどり着いてみたら廃業していてピンチ!という経験が何度かある。最近は早目の給油を心掛けている次第である。
都市部はまだいいかもしれないが、地方へ行くほど、ガソリンスタンド減少は深刻だろうと思う。高齢化が進み、過疎化が進む。ますます採算性が落ちて、ガソリンスタンドが減る。しかし、農業や漁業に従事している人たちにとって、ガソリンや軽油はなくてはならない大切なエネルギーだ。
採算性や経済性だけでガソリンスタンドの存続が危うくなったら、キャンピングカーどころか、日本の一次産業に大きな負担がかかりはしないか。
「何を大げさな」と思われるかもしれない。だが、名もない田舎道を走っていると、ふとそんな連想をしてしまう光景によく出会う。
今すぐ決断を迫られるような影響はないかもしれない。だが、長い目で見ても、考えねばならない課題であることは事実である。ともあれ今使っている車を大切に、購入計画中の方もご心配なく。その一方で、次世代にクリーンな環境を残すためにできることを、少しずつ意識していきたいと思う。