もしこれが最後の旅になるとしたら、どんな旅にしたい!?
キャンピングカー旅生活を始めた2005年頃、年配の男性から「1年の目標を考えておかないと続かなくなるよ」とアドバイスをいただきました。
例えば登山好きなら日本百名山制覇とか、どうせ日本一周するなら道の駅全制覇とか、テーマは何でもいい。ただあてどもなく旅をするのは耐えられない、というようなニュアンスでしたが、正直、当時まったく理解できませんでした。
達成感が得られないといけないのかな? と想像するものの、適当に「へぇ〜、そうなんですか。参考になります」と生返事をするあたりに、性格が出ますね(苦笑)。
あれから15年。やっと、その男性の気持ちが少し解るようになりました。
時間は無限ではない。明日も平常である保証はどこにもない。ただあてどなく旅をすることは、時間を無駄にするのと同義である、ということなのだろうと。
フリーランスという名のプータローがいつまでキャンピングカーを維持できるか年々カウントダウンされている気持ちで崖っぷちライフを楽しんでいましたが、それを軽く凌駕するこのコロナ禍は、マンネリ化した旅暮らしを再認識する機会を与えてくれました。
理想の旅暮らしを、あらためて思い描こう
そこで、「最期に食べたいものは何ですか?」くらいの意気込みで来年のスケジュールを想定(妄想)してみました!
もしこれが最後の旅暮らしになるとしても悔いのない一年にするには…
まず春は山菜採りとお花見です。
旅と関係ない!? しかし、これは毎年恒例で、これがなくては一年が始まりません。
まだ世間は冬である2月、地元・熊本では早々にタケノコやフキノトウが顔を出しはじめます。次いでワラビやセリ、ノビル、ウド、そして山菜の王様・タラの芽など。
自宅の周辺でも採集しますが、阿蘇まで採りに行くこともあります。こういう時は父の軽キャンパーが大活躍! 狭い山道でもラクラクです。
以前、キャンピングカー車内で天婦羅をしたら油が飛び散るのはもちろん、ニオイが取れなくて難儀しました。それ以降、キャンプ中に天婦羅をするとしたら野外で揚げるようにしています。
<写真:菊池公園(熊本県)、荘川桜(岐阜県)、観音寺川(福島県)、弘前城(青森県)>
次いで、お花見です。まず3月下旬頃に地元の菊池公園で堪能したあと、4月か遅くとも5月には北上を開始。
行く先々で桜の名所を訪れることもありますが、あらかじめ調べていた訳ではなく道の駅などで観光案内図を見たりして「こんなところがあったんだ」と知るパターンが多いです。
わざわざ立ち寄らなくとも河川敷やダム湖など桜を植えてあるところはたくさんあるので、ドライブ途中の疲れを癒し目を楽しませてくれます。
東北や北海道南ではゴールデンウィーク前後が見頃で、山間部であればチシマザクラやタカネザクラなど6月くらいまで咲いているのを見ることができるので北上の往路はずっと春気分を味わえます。
<写真:左=貞麟寺のカタクリ、右=落倉自然園の水芭蕉(ともに長野県)>
高山植物・山野草が好きなので、桜だけでなく様々な花めぐりをするのも楽しみです。
計算されたフラワーガーデンもいいですが、自然が見せてくれるお花畑は感動もひとしお。毎年、同じように咲くとは限らず「今年は天候に恵まれて花盛り」とか「去年の台風でやられてしまった」といった物語を秘めているところも、魅かれる要素のひとつです。
夏は北海道! 大自然もグルメも魅惑でいっぱい
<写真:左=旭岳とチングルマ群生、右=黒岳まねき岩>
ほぼ毎年、7月から9月まで北海道に滞在して「よく飽きないね」と言われそうですが、厳しい冬さえなければ住みたいくらい大好きです。(冬の北海道に来ないでどうする! と道民の方々には毎回お叱りを受けますが…)
大雪山系旭岳や黒岳周辺は何度も訪れているけれど、それでもまた行きたい。念願のトムラウシも訪れてみたい。
今までは日帰り登山ばかりだったので、山小屋泊やテント泊もしてみたい。
登山をしていて写真を撮る時になるべく人工物が入らないように構図を決めるのですが、近年どんどん山間部にも鉄塔や送電線、アンテナが林立しています。360度どこを見渡しても、そこにあるのは自然だけ、という景色は今や貴重だと言えるのではないでしょうか。
そんな大雪山で、人工物はおろか人間すら視界に自分しか居ないという時間が、何度かありました。今ここに自分しか居ないなんて贅沢を、また味わいたいものです。
そして北海道グルメも外せません!
海鮮好きなので偏ってしまいますが、写真は左上から時計回りにウニいくら丼、ホッケのお刺身、カニ丼、イカゴロお造り…、 あぁ〜、思い出すだけでヨダレが…。
特に、貴重なホッケのお刺身などなどでお世話になった奥尻島の民宿の女将さんには会いに行かなければ。
この15年でお世話になった方はたくさんいます。ご恩返しができるうちに、思う存分しておきたい。
元気な顔を見せるだけでも、いいと思うのです。
秋は紅葉とともに南下
<写真:左=城ヶ倉大橋からの眺め、右=十和田湖(青森県)>
例年、9月下旬から10月初旬頃に北海道を離れ、フェリーで青森に渡ります。大雪山系の紅葉が9月下旬頃なので、それを堪能した後に離道するパターンが多いです。
それから東北の紅葉、八幡平や栗駒高原などをめぐりたい。
四季のある日本の大自然は表情ゆたかで、そこに立っているだけで心が満たされます。
登山の後の温泉も格別です。
冬は九州でぬくぬくと
初冬の楽しみは新蕎麦。そして「ひやおろし」(冷卸し/秋あがり)! 日本酒が好きなのです。
山好き、蕎麦好き、日本酒好きとしても長野県は往路・復路どちらも外し難い。
そうそう、ここ数年は四国を訪れていないので、そちらも候補に入れなくては。讃岐うどんも大好きです。
メジャーすぎるためかスルーしていた金比羅さんに道後温泉、鳴門の渦潮も船から見てみたいし、久しぶりに「しまなみ海道」も走りたい。
山口県まで来ると、もう気持ちはゴール間近。
ひとりじゃ贅沢するのも気が退けるけど、「ふく」(山口県ではフグをフクと言います)で一杯といきたいところです。
熊本で生まれ育ったので寒いのは苦手。遅くとも12月には地元に帰り着くようにしています。
そして今度は野山でツタや木の実などを採集しクリスマスリースや正月飾りを手づくり。それらのハンドメイド作品や写真、水彩画などの展示会を開催する年もあったりして、冬は冬でけっこう忙しい。
あとは気候がいい日を選んで南九州を旅する年もあります。その時は、キャンピングカーの元々の持ち主である父を乗せて。
15年も経つと立場が逆転するもので、今や父がキャンピングカーを運転することはありません。
生活リズムが違うので朝が早いのはツラいですが、ときどき「運転がうまくなったなぁ」と褒めてくれると嬉しいものです。
子どもの頃、夏休みが40日もあっても移動手段はせいぜい自転車、お金がないからバスや電車で遠出することもできずにいましたが、それでも知らない場所へ出かけるだけで「冒険」でした。
社会人になったら、お給料はもらえても休みがない。ひと夏に週末は8回程度。1泊2日くらいじゃ、新幹線や飛行機を利用したとしても行ける範囲は限られています。
自分にとって必要なもの、人生をゆたかにしてくれるものは何かを模索する旅。もしかして、それが「自分さがし」というものなのか? 探し続けて幾星霜、いつまでかかれば満足するのか?
やばいです、一年じゃ足りない!
これはやはりアレコレ目移りせず、テーマを決めて絞り込まなければならないのかも…。
でも登山は外せないし、グルメは必須だし、神社めぐりも史跡めぐりも巨木めぐりも秘湯めぐりも島めぐりも酒蔵めぐりも…。
もう心は来年の旅生活に向けて走り出しています。