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  3. わたなべたつお2020年08月21日付けコラム
コラム

車だって「見た目が大事」

「人は見た目が9割」なんていう本が話題になったのはもう15年も前のこと。確かに第一印象は良いに越したことはなかろう。そしてそれは、車にも言えるのでは?という話。

「わかりにくさ」が問題なのかも

以前もコラムに書かせていただいたことがあるが、私の中に強烈に印象に残っているエピソードがある。国内某所のキャンピングカーショーでのことだ。
お父さんはキャンピングカーに憧れている。だが奥様はまるで興味がない。混雑していたせいか、少々声の大きかった奥様の声が耳に入ってしまった。
「ベンツやBMWが600万だ800万だっていうのならわかる。なんだってこんな配達の車に600万も払わなあかんの?」
いやいや奥さん… つい何か言いたくなりかけたが、いきなりこんないかついスキンヘッドに声をかけられたら、話がおかしな方向に転がりそうな予感しかしない。笑いをかみ殺しつつ、「お父さんがんばれ!」と念じつつ、そっとその場を離れた次第である。


だが、思い返してみれば彼女の発言にも一理あるかもしれない。我々キャンピングカーを愛するものは、「あの車のバンクのライン、いいよねえ」とか「リア周りのデザインはさすがの輸入車だね」なんてコアな話をすることもあるが、慣れない人がショーの会場を見渡しても、トラックやらバンやらが並んでいるようにしか見えないのも当然だ。キャンピングカーです、と言ったところで普通の人には「なにやら白くて大きな車」か、「え?ハイエースでしょ?」程度の認識だとしても不思議はない。


まあ、「配達の車」とはずいぶんな言われようだとも思うが、ベース車両のほとんどが貨物車・商用車なのは事実だし、着色アルミパネルを採用したカラフルな車もなくはないが、ほぼ白系のボディにちょっとしたラインやステッカーでロゴが入っている程度で上品にまとまっている。それでいて、国内で一番売れているバンコンの人気の理由に『キャンピングカーだとばれないから』『自宅に置いていても目立たないから』というのがあるというのは皮肉な話である。

欧米車のデザインはカッコいいのに?

 こうした事情は海外とて同じ。日本に輸入されているキャンピングカーだって、現地へ行けば「配達の車」である。ただ、外装のデザインについては、はるかに手がかかっている。特にアメリカ車は上級モデルを中心にオールペイントのものが主流。グラフィックもなかなかに派手である。
ミリタリー調の色彩でペイントを施し、いかにもなグリルやメタルパーツを張り付けたものは当然のように4WDだし、白を基調におしゃれなタイポで…という爽やかなイラストのものは、確かにリゾート向けの明るい内装であることが多い。つまり一目でコンセプトが理解できるのである。


ヨーロッパ車は日本同様、白地のものが多いものの、グラフィックについてはやはり凝っている。しかもベース車両の多くがフィアット社のデュカトやメルセデス・スプリンターなので、日本の商用車よりもサイズ面での規制がゆるい分、のびやかなデザインなのが悔しいところだ。
車そのもののデザインがおしゃれなんだから太刀打ちできない。とはいえ、日本には日本のオシャレがあってもよかろう。キャンピングカー人気もすっかり定着した今、そうした動きも、実際始まっている。

「見た目」と「中身」をどうマッチングさせるか

 もちろん、個人でドレスアップを試みているユーザーもいる。特にハイエースベースの場合は、ひとつのジャンルが確立するほどカスタムパーツも充実している。あいにくボンゴやカムロードのアクセサリーは少ないが、その分、DIYや、ほかの車から流用したパーツで遊んでいる人もいる。

 

そんな中、近頃新たに登場しているのが「バンライフ」に触発された人たちだ。
「バンライフ」とはアメリカから始まったムーブメント。元はといえばカリフォルニア・シリコンバレー界隈の家賃相場が急騰し、家を借りるのもままならなくなった人たちが車上生活を余儀なくなされた、という笑えない話が発端なのだが、そこはカリフォルニアである。どうせ車上生活をするならと、内装・外装ともにオリジナリティを発揮。オシャレで快適で個性的な「ライフスタイル」にまで昇格した。その「家にしばられず、気楽にバンで暮らす」というライフスタイルが、ロハス志向の人々にウケているのだ。


実際、バンライフムーブメントに影響を受けたキャンピングカーが、国内でもちらほら姿を見かけるようになってきた。こうした車両を好むのは、これまでほとんどキャンピングカーに興味を示さなかった人たちだ。そういう意味では新しいマーケットの誕生、ととれなくもないが、単なるファッションで終わらせてはもったいないと思うのだ。
まず、バンライフに憧れているひとたちは「オシャレさ」「しばられない、というコンセプト」に惹かれている。そのためキャンピングカーを選ぶときも「ベッドメイクのしやすさ」とか「シンク周りの収納」といった生活のしやすさに基準を持たない。どこまで行ってもファッションでしかないのだ。
実際、某ビルダーではショー会場でコンセプトカーの展示に、派手なグラフィックを施して出したことがある。同様の仕様車は店舗にもあるが、こちらはノーペイント。すると、店を訪れたあるお客さんが「ペイントをもっと詳しく見たかったのに」と、内装も見ないで帰ってしまったという。


「カッコ良さ」からキャンピングカーにアプローチする人が現れたのは、喜ぶべきことだろうと思う。これまで様々な理由でキャンピングカーが注目され、人気が上昇するのを見てきたが、確実に新しい層が動き始めている。どんな理由であれ、キャンピングカーのすばらしさに触れてくれる人が増えるのは大歓迎である。だが、この人たちを一過性のブームに終わらせないためにも、ぜひ「見た目」だけでなく「中身」にも目を向けてもらいたい。中身を知って、遊ぶ楽しさを知ってもらえれば、きっと末永いファンになってくれるに違いない。
実際、20年前には「カッコ悪い」からと見向きもしていなかった男が、こうして皆さんにキャンピングカーをお勧めする立場になったことを思えば、間違いなかろうと思う。

わたなべたつお

キャンピングカージャーナリスト。サラリーマンからフリーライターに転身後、キャンピングカーに出会ってこの道へ。専門誌への執筆のほか、各地キャンピングカーショーでのセミナー講師、テレビ出演も多い。エンジンで輪っかが回るものなら2輪でも4輪でも大好き。飛行機マニアでもある。旅のお供は猫6匹とヨメさんひとり。 朝日新聞デジタルで週刊コラム「キャンピングカーで行こう!」連載中 Youtubeチャンネル「キャンピングカー坊主めくり」開設中 https://www.youtube.com/channel/UCZzeJtgZFLR0yJLkr052kug

https://www.asahi.com/and_M/seriese/campingcar/

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