キャンピングカー白書やオートキャンプ白書が伝える「ウイズコロナ時代」の過ごし方
7月は、日本RV協会(JRVA)と日本オートキャンプ協会(JAC)の白書が発行される季節である。
両者を見ると、“コロナ禍”といわれる今年の厳しい状況に見舞われながらも、昨年度までは、それぞれ業績を堅調に伸ばしてきていることが伝わってきた。
日本RV協会においては、2019年度の販売総額が526億2,577万円という額を記録し、過去最高の数値を達成した。
もちろんキャンピングカーの保有台数も年を重ねるごとに増加し、昨年は11万9,400台を達成し、順調に増加していることが判明した。
また、ユーザー像にも新しい変化が見られるという。
前回の調査では、定年により退職したユーザーが増加している傾向が見てとれたが、今回の調査では現役世代を象徴する会社員の比率が多くなり、ユーザーの世代交代の気配が生まれつつあるとか。
それを反映して、レンタルキャンピングカーの利用者も40歳代の利用が目立ち、増加率でみると、20歳代の利用者が増えてきたとも。協会では、「若年層がキャンピングカーに興味を持ち始めてきたと考えられる」と白書をまとめている。
問題は、新型コロナ(COVID-19)の感染拡大が、日本のキャンピングカー産業とキャンピングカー文化の発展にどういう影響をもたらしていくかということである。
医療の専門家のなかには「今後2年はこの状態が続く」と観測する人もいる。
「ウイズコロナ」などという言葉も定着してきたように、今後は、コロナ禍という状況を受け入れつつ、それを新しいライフスタイルの発見と創造という観点で考え直した方がいいのかもしれない。
すでに、日本RV協会の降旗貴史会長は、「キャンピングカー白書」の序文で次のようなことを述べている。
「2020年は新型コロナウイルス感染症が世界的に広がり、大きな被害をもたらせているが、こういう苦難のなかで、キャンピングカーの機能性が改めて見直され、新たな価値を生み出そうとしている」
すなわち、「災害の避難用シェルターとして、さらに、リモートワークの拠点としてキャンピングカーが活用される」ということに会長は言及している。
確かに、キャンピングカーは、「動く家」として、外部と遮断された状態で旅行できる道具なので、コロナウイルスに感染するリスクを避けながら野外生活を楽しむことができる。
現在、「3密」を避けるという意味で、人が密集する都市部のレストランなどに行きづらいというご時世になってしまった。
しかし、キャンピングカーに搭載されたガスコンロ、電磁調理器、電子レンジ、冷蔵庫などを活用すれば、人と接することのない場所を探し、そのまま車内のキッチン機能を生かして食事を作ることもできる。
要は、キャンピングカーというのは、冷暖房機能、キッチン機能、娯楽設備などをコンパクトに配置した “小宇宙” なのだ。
降旗JRVA会長がいうように、パソコンやモバイル通信機器を搭載すればオフィスになるし、児童たちの勉強部屋、遊び場にもなる。
関連ページ:拡大成長を続けるキャンピングカー市場~業界の動向と最新データをまとめた『キャンピングカー白書2020』を発行~
日本オートキャンプ協会が発行する「オートキャンプ白書2020」においても、「3密」にならない場所として、マスコミがキャンプ場にスポットを当てたため、キャンプというアウトドアレジャーが注目を集めたことがレポートされている。
ただ、4月7日以降、7都道府県(埼玉、千葉、東京、神奈川、大阪、兵庫、福岡)を対象に緊急事態宣言が発令されて以降、指定された地域のキャンプ場では閉鎖を余儀なくされた場所も出たという。
それでも、キャンプ場は他の娯楽施設よりも、「密」にならないという特色があるため、7月の「Go To トラベルキャンペーン」時には、県外移動を自粛するようにいわれた東京在住のキャンパーは、都内のキャンプ場に遊びに行ったということがテレビのニュースでは報道された。
このようなキャンプ志向の盛り上がりを受けて、国民全体が「ステイホーム」を余儀なくされたときは、家のベランダでキャンプをする「ベランピング」などという遊び方も脚光を浴びて、テレビのワイドショーなどでもよく話題に取り上げられた。
要は、コロナ禍が猛威を奮うなかで、キャンプという遊び方も様変わりを始めてきたということなのだ。
「オートキャンプ白書」においても、キャンプ場の開放的な環境がコロナウイルスからの難を避けるというところに注目し、「今後、新型コロナウイルスとの共存状態のなかでもキャンプの需要が高まっていくことが予想される」と白書を結んでいる。
国民のライフスタイルがコロナのために大きく変化しようとしている時代を迎え、オートキャンプという遊び方やキャンピングカーという文化が、時代の最先端を進み始めている気配が濃厚になってきた。