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コラム

キャラバンサロンに見る、キャンピングカーの奥深さ

キャンピングカーの人気はますます盛り上がりつつあって、全国各地で行われるキャンピングカーショーは大賑わい。こうしたショーはもちろん海外にもあって、毎年、ドイツ北部の都市、デュッセルドルフで8月末から9月初旬にかけて開催される『キャラバンサロン』は世界最大級の規模だ。

それがどのくらいの規模かというと、会場のメッセ・デュッセルドルフは東京ドーム約5個分の広さ。そこに、地元ドイツはもちろん、ヨーロッパ各地をはじめ、世界25か国から、850社を超える車両メーカーや部品メーカーが出品するのだ。

ちょっとピンとこないかもしれないので、もう少し具体的に説明すると、例えば、幕張メッセや東京ビックサイトの、東1とか西1といったホールがありますね。あれ1つを丸ごと、1社の車両メーカーだけで使って全ラインナップを展示。1社で展示が50台以上なんてざらにある…そういう規模だ。

私はここ5年、この『キャラバンサロン』の取材を続けている。

初めて訪れた年は、その規模にひたすら圧倒された。翌年はさらに踏み込んで、出展企業の話を聞いたり、来場者の声を拾ったりできた。そうやって年々、取材回数を重ねるごとに、こちらの習熟度も高くなるし、新しい発見や、前年との比較で見えてくることもあるから面白い。

では、日本のキャンピングカーショーと何が違うのか。もちろん、違う点はたくさんあるのだが、もっとも目立って興味を引かれるもののひとつが、『Expedition Vehicles=探検車』の展示だろう。

タイヤだけで、私の身長ほどもある装甲車。軍事車両? パリ・ダカールラリーの出場車? と、思わずわが目を疑うのだが、これが立派なキャンピングカーなのだ。ウインチやサーチライトなどを備えたいかつい外装。ベース車両はベンツやMANの大型トラックそれも「これなら雪道も安心!」なんていう代物じゃない。そんな生活四駆が裸足で逃げ出す、本格的なオフロード仕様だ。戦地へでも行く気ですか? と突っ込みをいれたくなって、車のそばにニコニコしながら立っているセールスマン氏に声をかけた。

「こんな車、買う人いるの? それともコンセプトカー?」

ああ。俺のばか。ここは侮られちゃいかん。呆気に取られてることを気取られぬよう、なるべく尊大に、プレスパスを見せながら訊いたつもりなのだが、とっさ口をついて出たセリフは、なんとも陳腐だった。もっと「いかにも」な、キャンピングカージャーナリストっぽい質問がしたかったのに。

「もちろん、いらっしゃいますよ。今回のショーでも、具体的にお見積りを出しているだけで4件ほどございます」(渡部訳、以下同)。

セールスマン氏、柔和な笑顔を崩さず答える。う、売れてるのか。お値段は約1億円以上するんだが。

「なるほど。でも、この車を買う人は、どこで、どんな遊びをするんだろうね?」

使っている人がいるっていうなら、どんな人がどんな風に使ってるんだか、訊いてみようじゃないか、とわけもなく鼻白んだ。

それにしてもセールスマン氏、腰は低いが背が高いな。肩幅も私より広い。なんだ、この「勝てる気がしない」感。

「それはもう、『地球上どこへでも』、です」。

鉄壁なほほえみと共に、誇らしげな答えが返ってきた。

改めて車両を眺める。絶妙なタイミングで示されたスペック表をながめてみれば、確かに。世界中どこへ行っても、生きていけそうなだけの機能を十分に兼ね備えている。

「砂漠のような砂地でも、岩の多い山岳地でも、へっちゃらですよ。急こう配の登はんにも、オフロードの走破にも盤石の安定性です。タイヤの空気圧調整も運転席からワンタッチ、どんな地形にも対応できます。もちろん、完全空調も備えていますから乗っているご家族にも安心で快適な旅を楽しんでいただけます」。

ご家族? 砂漠や荒地へ、ご家族を連れていくのか。その瞬間、脳裏にかみさんと6匹の猫たちの顔がよぎった。

考えてみたら、当たり前なのかもしれない。ヨーロッパは、ジブラルタル海峡をはさんで、すぐ向こうはアフリカ大陸だ。トルコだって、ボスフォラス海峡を渡ればアジア側だ。

聞けば、アフリカへ渡って、砂漠でキャンプを楽しんだりするらしい。せっかくだから、内部も見せてもらった。いい加減、ヨーロッパ車の豪華で贅沢な室内は見慣れていたはずだが、これまた豪華ホテルか高級マンションか、という洗練された内装だ。外側のいかついイメージからは想像できない、白と黒のモダンなリビングが広がっている。ベッドはキングサイズ。もちろんふかふかだ。

なんだかくらくらしながらブースを後にする。が、見回せば、車体のおなか部分やリア部分に、ポルシェやフェラーリといった高級車がすっぽり収まる『ガレージつきキャンピングカー』がずらりと並んでいたりする。ここは大型車両コーナーなのだ。

なんだか狐につままれたような気分で、会場の外へ出た。

そういえば、日本の軽自動車ベースの軽キャンパー(バンコンタイプ)を見せたとき、ドイツの有名キャンピングカーメーカーの重役が目を白黒させて「Amazing!」と叫んだのを思い出した。小さな車両の中にいくつものギミックが仕込まれ、時にテーブルに、時にベッドに変貌する日本のキャンピングカー。それはまるで「箱庭のように整然と美しく」「考えつくされた設計」だというコメントをもらい、我がことのように誇らしかったものである。

もちろん、今回紹介したのはもっとも極端な一例だ。『キャラバンサロン』会場に併設されたキャンプ場では、数千万円クラスの大型車もいれば、1980年代のワーゲンのバンをベースにした、今にも底が抜けそうな、リアルにレトロなバンコンで寝泊まりしている家族連れがいたりもする。

ビール片手に、ふらりと立ち寄った私に向かって「楽しんでるかい?」と声をかけてくれた初老の男性。身振り手振りで、古い愛車をいかに大切に維持しているかを説明してくれる太ったおばさん。

超高級車も、ワーゲンバスも、どちらもキャンピングカーなのだ。等しく誰もが笑顔になれる、家族の幸せを運ぶキャンピングカー。これだから、この仕事はやめられないのだ。

わたなべたつお

キャンピングカージャーナリスト。サラリーマンからフリーライターに転身後、キャンピングカーに出会ってこの道へ。専門誌への執筆のほか、各地キャンピングカーショーでのセミナー講師、テレビ出演も多い。エンジンで輪っかが回るものなら2輪でも4輪でも大好き。飛行機マニアでもある。旅のお供は猫6匹とヨメさんひとり。 朝日新聞デジタルで週刊コラム「キャンピングカーで行こう!」連載中

http://www.asahi.com/and_M/campingcar_list.html

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