
ユーザー対談:マナーを守ってこそ楽しい「くるま旅」
増田英樹・日本RV協会 元会長 А・Mさん・ユーザー(東京在住)
【増田】
キャンピングカーによる宿泊場所として、「道の駅」は非常にポピュラーな場所だったのですが、最近、車中泊しているキャンピングカーを締め出そうとする場所がぼちぼち出てきたという話も聞きます。
また、一部のマスコミでは、道の駅や高速道路のサービスエリアやパーキングエリアで、マナーをわきまえないユーザーが他の利用者に迷惑をかけているという報道が流れたりしています。
そのあたり、実際にキャンピングカーを使って「くるま旅」を楽しんでいられるユーザーを代表して、А・Mさんはどう感じられますか? |

日本RV協会 増田英樹元会長 |
【A・M】
正直にいうと、私も昔は、高速道路のSА・PАで椅子を出してくつろいだり、ゴミ箱に生活ゴミを捨てていたりしたことがありました。
しかし、やはりそれが社会問題として採り上げられるようになってからは、もう金輪際マナー違反をしないように心がけています。キャンピングカーユーザーというのは、何かと目立つ存在ですから、公共の駐車場では常に注目されています。そうなると、私が少しでもマナーを守らないようなことを行ったら、他のすべてのユーザーさんに迷惑がかかると思うようになりました。
【増田】
今大きな問題として採り上げられているのは、そういう公共の駐車場におけるゴミ処理なのですが、日本RV協会でも、「ゴミを持ち帰ろう」という標語を盛り込んだマナーステッカーを作って配布しています。
А・Mさんは、旅の途中で出てくるゴミをどう処理されていますか? |

マナーステッカー |
【A・M】
2〜3日の短い旅はすべて持ち帰りです。キャンプ場で宿泊する場合は、そのキャンプ場の分別にしたがって捨てさせてもらっています。やはり、キャンピングカーで宿泊する場所として、一番安心できるのはキャンプ場なんですね。もちろん宿泊代はかかるわけですが、私たちが、ともすれば見過ごしがちな「セキュリティの保証が得られる」というのは、とても大きな意味を持っているんですね。
それに、キャンプ場ならば、誰にとがめだてされることなく、心おきなくオーニングを出して、椅子・テーブルを展開することができる。これはホッとしますね。もちろん、ゴミ処理もキャンプ場にお願いすることができる。
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ゴミ問題を訴えるSAの看板 |
問題は1週間から10日以上になる長旅の時ですね。移動距離が長くなる旅行の場合は、毎日キャンプ場に泊まるわけにもいきません。そこで、道の駅や高速道路のSА・PАなどを利用することになるわけですが、私は、思い切ってポータブル発電機をあきらめました。
私が乗っているクルマは5mクラスの国産キャブコンですが、ボディ横に5kgボンベと16iクラスの発電機が搭載できる外部収納庫があります。そこに発電機を入れていたのですが、長距離旅行のときは、そこを生ゴミスペースとして活用しています。どっちみち走行時間が長くなるので、サブバッテリー充電の心配もなくなるわけですね。
もちろん何日も収納庫に生ゴミを溜め込んでいるわけにはいきませんから、3日に一度ぐらいはキャンプ場宿泊を織りまぜて、ゴミ処理を受付けてくれるキャンプ場さんを探してゴミを投棄させてもらっています。
仲間は、車両用のゴミ箱などをキャリアに付けて、ゴミ処理を行っているようです。
【増田】
なるほど。ゴミ処理に関しては、ユーザーの自己処理責任の比重が大きくなる時代がきたということですね。出たゴミをどう処理するかという問題と同時に、またゴミを出さない工夫も必要になってくるでしょうね。
たとえば、短い旅行だったら、あらかじめ自宅で食料品を包装紙から出し、プラスチック容器等に移し替えるとか、カップラーメンも、中身だけ取り出して、マイカップなどに移して持っていくとか。そういう小さな工夫の積み重ねが大事になるように思います。
そのほかに、道の駅やSА・PАで休憩するときに、何か心がけていることはありますか? |

キャンプ場のゴミ |
【A・M】
基本的に、目立たず、ひっそりと(笑)。
オーニングなど出さない。椅子・テーブルなども展開しないということは、もう私たちの仲間では常識になっています。
ただ、新しいユーザーさんでしょうか、グレータンクの排水をそのまま駐車場の側溝に流したり、トレーラーのユーザーさんですけど、混雑した公共駐車場に、トレーラーだけ残し、ヘッドで遊びに行ってしまったという状況を見たこともあります。
そのトレーラーが最初にそこに着いたときは、たぶん周囲に誰もいなかったのでしょうけれど、昼過ぎに駐車場が混んできて、他の乗用車が順番待ちをしているような状態になってくると、そういうキャンピングカーを目障りだと感じるお客さんも出てくるかもしれませんね。
【増田】
私たち日本RV協会でも、このたびホームページを通じて、「くるま旅」を楽しむときのマナーを守っていただくよう、ユーザーさんに呼びかけています。
私たちが把握するところ、すでにキャンピングカーライフを長く体験されている方は、私たちが言うまでもなく、しっかりマナーを守っておられる方々が多いんですね。
しかし、ごく一部のユーザーさんの中には、まだそのような自覚をされていない方もいらっしゃって、それがマスコミなどでも問題視されるようになったと思うのです。
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SAに放置されたゴミ |
ただ、こういう問題は、規則やルールとして明文化すればいいというわけにはいかず、最終的にはユーザーさんの「心の問題」になるように思います。あまり、規則やルールという形でガチガチに縛り付けても、ただ堅苦しくなるだけだし、かえって「抜け道」を画策するような人々が出てこないとも限らないわけですね。
【A・M】
私は、何がなんでもすべて「禁止」にして、例外を許さないという態度ではかえって、ユーザーさんのモラルの向上にはつながらないと考えています。
「道の駅では、椅子もテーブルも出してはいけない」といっても、たとえば他の乗用車が1台も停まっていないような深夜の道の駅で、たまに月を眺めるために、車外に椅子を持ち出すなどは許されてしかるべきだと思います。
カセットトイレの処理だって、深夜や早朝、人に迷惑のかからないような時間帯を見つけて行うことは、許される行為だと思うんですよね。
それよりも、状況に応じて、許される行動と許されない行動を自分でしっかり把握できるような「高度な判断力」が、ユーザーに期待される時代が来たように思うのです。
【増田】
そうですね。そのための最低限守らなければならないルールというものをまず確立して、そこから先は、私たちユーザーが自分の頭を使って、臨機応変に物ごとを考えるという、大人の判断を身につけるということが、求められるようになってきたのかもしれませんね。
【A・M】
生意気な言い方になってしまうのかもしれませんが、「人間力」とでもいうのでしょうか。他人は何を迷惑と感じるのか。その他人に立場に立って物ごとを考える力というものが、これからは、ますます要求されるようになると思うんですね。
そうなると、単にルールの問題ではなくなります。ルールに書かれていないことでも、状況によっては遠慮しなければならない行為というものも出てくるでしょうし、逆に、ルール違反に思われそうな行為でも、状況によっては許される場合もあるでしょう。
基本は、「人間として、自分はいま恥ずかしい行為をしているのかどうか」。
そういう心のマナーを、私たちが自分自身で築き上げていくことが大事なのでしょうね。 |

キャンプ場にて
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