1. トップ
  2. コラム一覧
  3. わたなべたつお2018年03月30日付けコラム
コラム

「当たり前」ということのスゴさ

仕事柄ということもあるが、自分の車(普通自動車)には、極力ヒッチメンバーを取り付けることにしている。ちょいちょい、車を乗り換える我が家。「極力」というのは、時としてトレーラーのけん引に耐えられないようなオンボロを引き当てたりすることがあるのだ。

■ヒッチメンバーの取り付けに一苦労

さて、その取り付けだが、勉強のために自分でやることにしている。ヒッチメンバーそのものはどの製品も精度よくできていて、よほどのことが無ければ小一時間でできるようになっている。だが、問題は電気配線だ。
当然ながら、トレーラーもブレーキ、ウインカー、バックなどの灯火がきちっと連動しなければならない。そのためヘッド車から分岐して配線していくのだが、これがなかなかに面倒な作業なのだ。
まずはヘッド車の内張りをはがして、配線の束の中から目当ての線を探し出す。それだけでも手間なのに、最近の車はなにかとおせっかいにできていて、ちょっとイジるとすぐ警告メッセージが出たりする。LED化が進んだおかげで、コンビネーションランプの2段階(スモールライト点灯時と、ブレーキを踏んだ時)への対応も複雑だ。単純に線をつなげばいいというわけにいかず、配線作業だけで半日かかったりもする。

■トレーラーをひくのが当たり前?

つい先日、知人のボルボにヒッチメンバーを取り付ける手伝いをした。「さあ、今回も配線が大変だぞ…」と、内心覚悟したのだが、知人が持ち込んできたものを見て驚いた。ボルボの純正部品だという配線キットで各国語の説明の中に日本語もある。マニュアル通りにその配線を通して、指示されたコネクターにパチンと繋ぐだけ!ものの15分で終わってしまった。トレーラーとのカプラーもガッチリとシリコンで固められていて防水も完璧。当たり前だが、全てがメーカークオリティなのだ。なにより素晴らしいのは、これがボルボジャパンで買えるという事実。しかも現行車種だけでなく、かなり古い車種でも用意されているというから驚きだ。

ボルボは輸入車の中でも数少ない「日本法人がトレーラーけん引を認めている」メーカーである。オプションリストにヒッチメンバーがあるだけでなく、配線キットまであるのだから「通りいっぺん」の「建前」でないことは明らかだ。以前から「頑丈で」「ラフに使ってこその車」であることを、テレビCMなどで謳っていたボルボならではのフィロソフィーだろう。

これが他の輸入車ではこうはいかない。日本法人に問い合わせると「本国仕様と日本仕様は異なります」とか、どうかすると「けん引はご遠慮ください」などと言われる始末。ただ、各メーカーの名誉のために言っておくと、これは日本だけの話だ。欧米で販売されていてトレーラーが引ける車なら、それが日本車であろうとも、ヒッチメンバーは純正で用意されている。もちろん配線キットも、だ。
つまり欧米では(キャンピングトレーラーに限らず)、乗用車で何かをひくのは「当たり前」だということなのだ。
 

■日本でキャンピングカーが当たり前になる日は来るか

この「当たり前」というのは、とてもすごいことだ。
キャンピングカーがあって当たり前。トレーラーをひくのが当たり前。
そんな国では、街中でキャンピングカーやキャンピングトレーラーをしょっちゅう目にする。主だった観光地、巨大な展示会場(メッセ)、サーキットなど、人が集まる場所にはキャンピングカーの停泊施設がある。ヨーロッパやアメリカへ行くたびに、いかにキャンピングカーが生活文化として根付いているか、痛感させられるのである。

さて、わが日本ではどうだろう。
巨大なスタジアムやドーム、サーキット、展示会場はあるが、残念ながらどこにもキャンピングカーの停泊施設があるという例はない。いよいよ迫ってきた2020東京オリンピック・パラリンピックではホテル不足が騒がれていて、港に停泊させた客船を宿泊施設として利用する「ホテルシップ計画」が検討されているが、キャンピングカーの停泊場所といった話は一つも出てこない。アジア諸国からのインバウンド需要も、爆買いから「コト消費」へとシフトしつつあるのに、まだまだレンタルキャンピングカー活用にまでは至っていない。
それをひとくちに「嘆かわしい」と思うか、そこにこそブルーオーシャンがある、と見るか。個人的には、まだまだ日本のキャンピングカー事情には伸びしろがある、と信じて疑わない。

明るい兆しもある。
私が日ごろ買い物をするスーパーマーケットには大きな駐車場があるが、知る限りでもキャブコン2台、バンコン2台の常連客がいる。仕事場の前を、いつもほぼ決まった時間に通過するキャブコンは、おそらく通勤なのだろう。確実に、街中でキャンピングカーを見かけることが珍しくなくなってきている。

各地で開催されるキャンピングカーショーは相変わらず盛況だ。人気のビルダーは納車1年待ちなんてこともザラにある。そして私個人は、昨年11月よりRVパーク推進委員を拝命した。一か所でも多くRVパークを増やすべく、東奔西走の日々である。
「キャンピングカーが当たり前」になるには、キャンピングカーが増えること、遊びに行く場所も増えること。そんな日は、もうすぐそこまで来ているのだ。

わたなべたつお

キャンピングカージャーナリスト。サラリーマンからフリーライターに転身後、キャンピングカーに出会ってこの道へ。専門誌への執筆のほか、各地キャンピングカーショーでのセミナー講師、テレビ出演も多い。エンジンで輪っかが回るものなら2輪でも4輪でも大好き。飛行機マニアでもある。旅のお供は猫6匹とヨメさんひとり。 朝日新聞デジタルで週刊コラム「キャンピングカーで行こう!」連載中

http://www.asahi.com/and_M/campingcar_list.html

関連コラム

キャンピングカーで回った中部のおすすめ道の駅〈エンターテイメント!〉

浅井佑一

2018年04月15日公開 (2015年10月02日更新)

子供はいくつになるまで親の
キャンピングカー旅行について来るか?

町田厚成

2018年03月16日公開 (2018年03月11日更新)

【やってみた】キャンピングカー生活で家庭菜園

しう@SOTO

2018年03月02日公開 (2017年07月03日更新)

走行性能と燃費を検証してクルマ選び

山口則夫

2018年02月16日公開 (2018年02月13日更新)

新年1発目の外遊びは、長男と男同士の西伊豆キャンプ

岩田一成

2018年02月05日公開 (2018年01月30日更新)