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コラム

キャンピングカーのライバルって、何だろう?

毎年、晩夏になるとドイツへ行く。デュッセルドルフで開催される世界最大のキャンピングカーショーを取材するためだ。

数年前、ある有名ブランドのブースで、セールスマン氏から印象深い話を聞いた。
「私たちの競合(ライバル)は、LCCなのです」。
LCCとは、ロー(Low)コスト(Cost)キャリア(Carriar)。つまり「格安航空会社」のことだ。航空運賃の価格破壊は全世界的な傾向だが、地続きで国と国が隣接しているヨーロッパでは特に顕著なようだ。
EUのおかげで通貨も統一され、ますます行き来がしやすくなったヨーロッパ諸国。どこまでもキャンピングカーやキャンピングトレーラーでトコトコと旅をするのが従来のスタイルだったが、コスト面ではLCCに脅かされたのだという。

■懐は苦しい。でも、旅がしたい!

 ヨーロッパは税金が高い。ドイツ滞在中は消費税が19%。かみさんにせがまれてオランダのアウトレットまで買い物に出かけたが、かの地では21%だった。
それでも消費税はまだいい。買い物しなければよいのだから(さすがのかみさんも、アウトレットとはいえ、そうとう吟味して買い物したらしい)。
ドイツでは、給与に対する所得税+社会保障費の占める割合はなんと49.4%だという。健康保険、介護保険、失業保険、老齢年金の掛け金がずば抜けて高いのだ。
その分、リタイア後の保障は非常に手厚い。医療がほとんどかからないのは、確かに安心だろう。だが、元気に遊びたい現役世代の手取り収入が少ないのは、特に子育て世代には辛いところだ。
そこで台頭したのがLCCだった。安価に近隣諸国へ飛べる。長距離を運転する負担もない、というわけだ。
 ところが最近、ヨーロッパのキャンピングカー市場は活況である。
それはひとえに、LCCが頭打ちになりつつあるおかげだろう。毛布を借りるだけで別料金、機内食はすべて有料。おまけに軽自動車だってここまで狭くないぞといいたくなるシートレイアウト。あれでよく、体格のいい欧米人が座れるものだと思う。
最近では経営破たんする企業も出始めた。突然の失脚で、乗客が旅先から帰れなくなったという事件も起きるようになり、旅好きたちはキャンピングカーに戻ってきているのだという。経済事情が苦しくても旅をしたい、遊びたい! 遊びに貪欲なヨーロッパ人らしい動きだなあと思った次第である。

■さて、日本はどうだろう…?

 振り返って、日本のキャンピングカーはどうだろう。ライバルは一体、何だ。
考えるに、やはり格安ツアーとか、バスツアーの類だろう。
特にバスツアーは、シニアの方々に人気のようだ。集合場所でバスに乗ってしまえば、あとは乗り換えもない。荷物も積みっぱなしにできる。適切なタイミングでトイレ休憩もしてくれる。少々お天気が悪くても、雨にぬれずに観光地へ行ける。なるほど。
こうしたツアーに、キャンピングカーが対抗できるのは、何だろう。

 ・どこまでもプライベートな空間。

 ・疲れたら、手足をのびのび、伸ばして休める。

 ・自分のペースで旅ができる。

 ・行きたいところへ行ける(ツアーにない目的地もOK)

 ・予定変更も思いのまま。

 ・止まりたいところで、止まれる。

おお。結構あるぞ。
特に最後の、「止まりたいところで止まれる」のはすばらしい。
新幹線ができて、長距離をあっという間に行き来できるようにはなった。だが、途中下車する人が減ってしまったのも事実。バスツアーだって、止まる場所はあらかじめ決められている。
事前にネットで調べた場所、通りすがりに気になった場所。そんなところにちょいと止まって、思わぬ出会いを楽しめるのがキャンピングカーではないか。
SNSで「明日はこの辺にいます」とアップすると、突然のサプライズでキャンピングカー仲間が訪ねてきてくれたりする。バスツアーじゃ、こうはいかない。
やっぱり、キャンピングカーは最強の、遊び道具なのだ。

■「若者の〇〇離れ」は本当か?

 ここからは蛇足だが、思いついてしまったのだから書く。
よく「若者の〇〇離れ」という言葉を聞く。〇〇には「酒」「麻雀」「クルマ」「本」…いろんな言葉が入る。だが、それって本当なのか?
ゲームに興じる若者は多い。CDは売れていないかもしれないが、人気アーティストのライブチケットは争奪戦だ。それに、キャンピングカーはちゃんと売れている。
若い子育て世代のファミリーにも、リタイア後の生活を楽しむシニア層にも。
日本RV協会が発表した数字によれば、2016年の販売台数は5,000台を突破。こんなにも年齢層に関係なく、クルマが売れないと言われている時代に売れ続けているのはキャンピングカーだけだ。
なぜだろう。
日本人は、遊びを忘れたわけじゃない。遊ぶのは好きなのだ。景気が悪ければ、可処分所得は減るかもしれない。でも、お金の使い方が変わっただけなのではなかろうか。
キャンピングカーを持つことで、本当に心豊かな経験ができる。新しい友ができる。そのすばらしさに気付いた人たちが、キャンピングカーを買っているのだ。

わたなべたつお

キャンピングカージャーナリスト。サラリーマンからフリーライターに転身後、キャンピングカーに出会ってこの道へ。専門誌への執筆のほか、各地キャンピングカーショーでのセミナー講師、テレビ出演も多い。エンジンで輪っかが回るものなら2輪でも4輪でも大好き。飛行機マニアでもある。旅のお供は猫6匹とヨメさんひとり。 朝日新聞デジタルで週刊コラム「キャンピングカーで行こう!」連載中

http://www.asahi.com/and_M/campingcar_list.html

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