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コラム

キャンピングカーとDIY

「キャンピングカーを、自分の好みや使い勝手に合うようにカスタマイズする」
よく聞く話です。
「ちょっとした故障や不具合は、自分で直す」
これもまた、よく聞く話。
実際、ネットのブログやSNSを見ると、自作やカスタマイズの事例やノウハウを共有しているユーザーさんをよく見かける。

かくいう私も、キャンピングカーにはまった原点は、手に入れた車を修理したり補修したのがきっかけ。最初の一台は経験もないクセに個人売買で手に入れ、おかげで車の面倒は自分で見なければならなかったのが、始まりだった。
入手した時点で大概な年数を経ていたその車は、次から次へと不具合が発覚。そのたびにあれこれ試行錯誤し、時にはますます傷口を広げてしまったことも。

そのときの経験が今に繋がっていると思えば、むしろ感謝なのだが…
その当時と現在の、キャンピングカーを取り巻く環境の変化を考えるに、改めて、DIYの楽しさと難しさを思わずにいられない。

◆基本、クルマの整備はドライバーの責任

道路運送車両法第47条によれば、
「自動車の使用者は、自動車の点検をし、及び必要に応じ整備をすることにより、当該自動車を保安基準に適合するように維持しなければならない」とある。
つまり、自動車の整備はドライバーが自分でするものだ、ということ。ブレーキだろうがエンジンだろうが、自分の車は好きに整備していい。(業務として他人の車を整備するには資格が必要)。
ましてや、キャンピングカーの居室部分の整備については、法的な定めはまったくなく、個人がDIYする上で、制約はほとんどないといっていい。
先に書いた通り、今ではネット上にさまざまな情報があり、先輩ユーザーの経験談や事例も目にすることができる。
私も、猫に破壊されたブラインドの修理方法はYou Tubeで学んだぐらいだ。

 ここで気を付けなければならないのが、
「自身の技量と安全性をきちんと判断すること」。
自動車部分については、国の定める保安基準がある。そのガイドラインに沿った整備であれば、命を預ける乗り物として十分な安全性が担保されてる。
また、住宅には住宅の安全基準がある。だが、動く家であるキャンピングカーには、それはない。

■例えば電気
自動車部分も居室部分も直流12V(一部24Vの車両もある)が多く使われている。一般家庭は交流100Vなのでそれに比べれば電圧は低いが、電気の特性から、実は出火する危険性は逆に高いのは直流12Vのほうだ。ましてキャンピングカーは動くので、配線の固定などもより慎重になる必要がある。事実、国交省の調査によれば、車両火災原因の過半数は後から付けたアクセサリー類の配線不良などによるものだという報告もある。
直接、電気工事でなくても注意は必要だ。ちょっとここに収納があるといいのに…と、気軽に棚を増設したとする。大して重量もなく、難しい大工仕事でもないので気軽にできそうだが、はたしてそこは、釘を打ってもいい場所だろうか?
見えないところに、配線や配管が通ってはいないか?

■家庭用エアコンやバッテリーの増設は?
最近よく見かけるDIYが、こうしたインフラ整備にまつわるもの。
最近の家庭用エアコンは非常に優秀で、省エネにも優れている。キャンピングカーにとっては非常にありがたい製品だ。バッテリーも、外部からの電源供給のないところで宿泊したい人にとっては、ぜひ増やしたい設備のひとつだろう。
だが、これらの機器には重量がある。いくらベース車両がトラックや商用バンだったとしても、また、室内に十分な面積・体積があるように見えても、素人考えで取り付けると、最悪大きな事故を引き起こすことがある。
ここで気を付けたいのが、重量バランスだ。
キャンピングカーのタイヤには、ただでさえ、車体のシェル(外装)や各種設備、内装の重量がかかっている。そこに人が乗り、荷物が載る。さらにそうした重たい設備を加えようとするなら、重量配分は慎重に検討すべきだ。
過度な荷重は、燃費に悪影響を及ぼすばかりか、タイヤのバーストを引き起こす可能性だってある。
キャンピングカーは、製造段階で、各車輪への重量配分はきちんと計算されている。それを後から変更させようというならば、まずはプロ(ビルダーやディーラー)に相談するのが安心だろう。

◆ディーラーに頼むと、本当に高いのか?

 それが趣味、というならともかく、多くの人がDIYに踏み切る理由としてよく聞かれるのが
「ビルダーに頼むと高い」
「オプション設定があったが、自分でやった方が安い」というもの。
中には「ビルダーのぼったくりだ」なんていう人までいらっしゃる。
だが、本当にそうだろうか?
DIYの結果については、すべての責任はやった人本人にある。失敗したからといって、誰にも責任は取れないし、まして保障は受けられない。ただただ「やっちまった…」と反省するしかない。反省で済めばまだいいが、場合によっては致命的な故障に繋がったり、かえって高い代償につくことも。ましてそれが、安全を脅かすものならなおさら問題は大きい。
その点、プロはそうはいかない。失敗すればクレームに繋がるし、なにより信頼に傷がつく。どんな補修修理もカスタマイズも、プロだとて必ず一回で成功させるという保証はない。そのリスクの保障まで担保するために、彼らは技術を磨き、必要な資材を常備。そのためにかかる費用は、当然、価格に反映される。
 オプション類が高価なのにも、それなりに理由がある。
たとえばインバーター。安価な海外製品がネットショップなどで売られていて、私も使っているが、ハッキリ言って品質は「それなり」。それを承知で「2年もてばラッキー」と割り切ることにしている。だが、ビルダーがオプションで設定する場合は「安価な海外製品なので壊れやすいです。でも壊れたら交換しますから」では信用問題になる。
信頼のおける製品を選んで採用し、さらに万が一の故障時の代替品をストックしたりすればコストがかかるのも仕方ないのがお分かりいただけるだろう。

 DIYを否定するつもりは毛頭ない。むしろ積極的に愛車にかかわり、理解を深めることにもなるのでお勧めしたいとさえ思う。だが、何でもかんでもDIY、には「ちょっと待って」と言いたい。
自分にできること・できないことを見極めること。少しずつでも失敗と成功の経験を重ねること。そして何より、「ぼったくり」などと疑わず、ビルダーさんと良いお付き合いをすること。
プロの智恵を賢く借りて、安全に楽しんでこそ、真のDIYだと思うのだ。

わたなべたつお

キャンピングカージャーナリスト。サラリーマンからフリーライターに転身後、キャンピングカーに出会ってこの道へ。専門誌への執筆のほか、各地キャンピングカーショーでのセミナー講師、テレビ出演も多い。エンジンで輪っかが回るものなら2輪でも4輪でも大好き。飛行機マニアでもある。旅のお供は猫6匹とヨメさんひとり。 朝日新聞デジタルで週刊コラム「キャンピングカーで行こう!」連載中

http://www.asahi.com/and_M/campingcar_list.html

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